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お酒の話
  前回、お酒造りに必要な糖分は、ビールの場合は、植物が持っている「糖化酵素」の働きで得ることを紹介しました。実は、植物だけでなく人間も唾液の中に「糖化酵素」を持っています。ご飯を良く噛んでいると口の中が甘くなりますね。古代日本では、これを利用したでんぷん質(お米)を噛んで造った「口噛み酒」というものがありました。
 その後、日本へ中国大陸から「麹酒」がもたらされました。カビの仲間の「麹菌」を利用して造るお酒です。中国や東南アジアの伝統的な酒造方法で、中国ではもち米を原料に、小麦粉やもち米粉と植物の汁や数十の薬剤を混ぜ、クモノスカビを生やした団子状の酒薬で仕込みます。「老酒」といわれるお酒ですが、いまだに科学的に解明できない部分があり、あまり進化していない酒造りといえるかもしれません。
 一方、日本に渡ってきた麹酒「日本酒」は、特有の進化を遂げます。日本酒造りの技術の高さを、アルコールを発生させる糖分の話で説明しましょう。
 お酒の世界では、糖分の量を「糖度」という数字で表します。一升詰のお酒とみりんとでは重さが違うように、同じ体積でも、ものによって重さが異なります。糖度は水に比べた重さの違いで計ります。水は、摂氏4度の状態で、1センチ角の立方体の体積が1t、重さは1グラムです。100tの水の重さは100グラムです。
 これに対してぶどうジュース100tは、少し重く120グラムなどとなります。この増えた重さは光合成で蓄えられた糖分として「糖度20のぶどうジュース」と表現します。この糖分を酵母菌がすべて食べ尽くすと辛口のワイン、食べ残すと甘口のワインとなります。
 さて、この糖度20のジュースが辛口ワインになった場合のアルコール度数は、糖度のの数字の半分「10度」となります。残り半分の数字は「炭酸ガス」です。これを逆算すると、できあがりのお酒のアルコール度数から原料の糖度を知ることができます。大よその数字ですが、ワインのアルコール度数は10度、ビールは5度、日本酒の原酒度数は20度とします。糖度はアルコール度数の倍ですから、それぞれの糖度は、ワインは20、ビールは10、日本酒は40となります。日本酒造りでの麹菌の糖化力は、ワインの2倍、ビールの4倍です。麹菌は、太陽の恵みや植物の力にまさる量のお酒の原料である「糖分」を生み出すことを可能にしています。
 ところで、ワインの世界にも原料が糖度40を越えるジュースがあります。「貴腐ワイン」といわれるもので、ぶどうの皮に貴腐菌が着いて穴が空き、なかの水分が蒸発して濃くなったものです。しかし残念ながら、アルコール度数は20度にはなりません。砂糖が何年経っても腐らないように、大量の糖分は微生物には悪い環境で、濃糖圧迫のなかでは酵母菌の活動がにぶって、全部の糖分を食べ切ることができず、ふつうのワインと同じくらいのアルコールを出して食事終了。糖分を大量に残した極甘のデザートワインとなります。
 それに比べ、日本酒造りには、世界最大量の原料糖度を、酵母菌に全部食べ尽くさせる技術があります。酵母菌の働きと麹菌の糖化作用を同時進行させながら、一度に大量の糖分を発生しないようにして、すべてを酒(アルコール)にするという高度な技術です。
 そのため日本酒は、ワインやビールと違って製造工程が非常に複雑で、酒造りの現場での造り手の考え方、造り方の違いで、さまざまなタイプ、スタイルのお酒が誕生します。日本酒は、原料農産物の善し悪しが、品質を決定づけるワインやビールと違い、酒蔵という工場の中で、人間の工夫で造り上げられる工業生産品なのです。米のできが悪くても一定品質のお酒が造られます。ただ杜氏さんの睡眠時間が減りますが……。
 良いワインやビールを口にしたとき、ぶどう畑や麦畑がイメージされ、良い日本酒は人の顔が浮かんでくる、そんな気がしませんか?
 約1万年前に地球上に同時に出現した、唾液酒は論外として、果物のワイン、麦芽のビール 、麹の日本酒。これらは世界の三大銘酒と言えるお酒です。