開 運 (かいうん)

掛川の南、御前崎方向に行く途中の北条の戦いで有名な高天神城の近く、小 さな山の麓にこのお蔵はあります。小さな川を濠のように配置して、まるで武家屋敷のようなたたずまいです。入って正面が蔵、左手に精米所、そのとなりにご自宅があります。すぐ裏は山でこの蔵の場所だけが気候温暖土地の中で寒気が漂っています。

 平成13年2月久々にちょうど吟醸の洗米をしているところに伺いました。以前県の先生をしておられた川村伝兵衛さんの考案した洗米機だそうでステンレスの底の平らな円形の籠に入れられた米がガシャガシャと揺すられ温度調整された水をかけられていました。普通酒米も洗米の水槽でノズルから気泡の混じった水を吹き付けるという独特な装置で行われていました。蒸米も以前蔵元さんが考案した「土井式」を進化させた島根の堀江先生が考案した甑を使って香りの爽やかな蒸米を作っていました。気候温暖な地のために放冷機に冷風を送る装置も装備、麹室は2階建てで2セットを用意し、ハクヨー3段式と5段式、それに小蓋を使用、室内の湿度管理のために除湿器も屋外に設置、室内の空気を冷やして除湿、それを温めて麹室内にもどす装置です。米の研ぎ汁を処理する大型の設備も完備されていました。発酵室は3つでお酒の種類ごとに分かれています。搾りは槽とヤブタの2台。

なによりの驚かされたのは火入れの装置です。歩く歩道のような装置ですが、熱湯から水までの温度調節のできるシャワーを備え、瓶火入れが大量に消化できていました。瓶詰め能力も一日一万本と十分すぎる能力です。貯蔵庫もフォークリフトが出入りできる大型の冷蔵庫が2室作られ、すべてのお酒が納められていました。以前のちょっと重たい感じが酒から消えていたのにはこんな理由があったのでした。東京農大を卒業した息子さんも蔵に入り、すべてがうまくいっている印象でした。 酒名の良さからよく求められますが、数々の 鑑評会でも優秀な成績を収め、地元でもまぼろし化さえして入手が困難になっ ているほどです。蔵元は大変な努力家で、土井式と命名された和釜の甑(こし き)の発明や麹室(こうじむろ)の工夫、仕込蔵そのものを冷蔵するなど、お 酒に対する情熱がいろいろな形で蔵のそこここに現れています。またより良い 仕込み水を求めて、毎日数キロ離れた高天神城まで汲みに行ってます。

(株)土井酒造場

静岡県掛川市小貫


蔵元:土井 清ナ氏

杜氏:故波瀬 正吉氏 
(能登杜氏)